中公文庫
師匠の一人に薦められた1冊。
未完の遺作ながら本当にすごいとのこと。
雑誌連載の最終回の途中で切れた様子。
明治に生まれ昭和の最後に亡くなった氏のまさに最後の作品。
幕末に大阪の堺で起きたフランス人兵士を殺害した土佐藩の兵士たちについて。
詳細に歴史をひもときながら描かれる文章は詳細であるがゆえに読みにくい。でも味わい深く、寺尾聰あたりに朗読して欲しいような作品。
ただ、お国のためという熱意ゆえに外国人を殺し、お国のためにフランス人の前で「堂々と」腹を切る、というその姿にその時代としてはあるいは当然だったにしても悲しさがある。
大岡昇平自身、第二次大戦中は召集され各地に派遣されたらしい。時代ごとの空気を幾重にも体験した大岡昇平には、この時代の日本のあるいは各国の人々の心の動きがどう見えたのだろう。