うたたねひつじ

日々のつれづれ。おそらく主に食事、読書、ガンダム、その他が話題になるかと。

『国際秩序』

18世紀ヨーロッパから21世紀アジアへ

細谷雄一 中公新書

国連に関してて話してた時に日本人は国連が好きだが、本当にそんなによいものか、と指摘を受けてそういやあ、そういう背景をしっかり考えてこなかったなあ、と思い、Amazonで検索して出てきたのが本書。

タイトルの通り、18世紀からのヨーロッパでの外交史から始まる。著者の専門がヨーロッパ外交史ということで、ヨーロッパの当時の大国間の戦争と外交の関係が主な思想家、キーマンを紹介しながら説明される。

当時のヨーロッパは国こそ違えど統治者が親戚関係があったり、出身国だったりと互いに近い関係であり政治体制なども近く似た価値観をもっている中でのある種の秩序のようなもののある外交関係だった。当初は肥大化するフランス対諸外国であった関係は他の国々の協調の中で力の均衡がはかられる、という構図があった。その後、プロイセン、そしてドイツが台頭してくる。それまでは民間人にはあまり影響のなかった戦争は次第に範囲が広がり、そして第1次世界大戦が勃発する。力の均衡という外交関係は協調による力の均衡と協調なき力の均衡の間を行き来し、その中で共同体の体系という発想を生み出す。そして国連の誕生。しかしそれが機能し出すのは第二次大戦におけるイギリス、ソ連、そしてアメリカの参戦という形の中でとなる。戦勝国側の思惑の中で機能しだした国連。その後はしかし大国となったアメリカとソ連との間のいつ新たな大戦が勃発するともしれない緊張関係の中で続く大きな戦争はない冷戦という形で危うい平和が続くことになる。

ドイツの統一、ソ連の崩壊と言った中でも思惑は絡む。

その間には湾岸戦争もあった。クウェートへ侵攻したイラクへの国際的な連携による国連の積極的な平和活動への幻想。戦争は圧勝したがその後は各国の思惑がからみ国連による積極的な平和活動の姿勢は十分な役割を果たせぬものとなる。

その後の話の焦点は主にアメリカに置かれる。ブッシュ、クリントン、ブッシュ、オバマと続くこの間のアメリカの大統領の中で国際関係へのアメリカの姿勢は変化し続け、オバマの時代にアメリカの向く先はそれまでの大西洋側から太平洋側は移る。巨大化し続ける中国に対しアメリカはそして図らずも太平洋に軸が移る中で中心に置かれた日本はどう向き合うか、という問題提起をもって本書は終わる。

新書なのですぐ読み終わるかと思っていたが思いのほかボリュームのある本だった。とてもよい勉強になった。ノートでも書きながら読むべきだったかもしれない。